残と余 =楠正行=



     死して後む
     本当に?
     能事のうじわる
     本当にそうだったのだろうか?


     生まれながらにしてされた烙印
     湧き上がる、情、思い、望み
     それは
     まことに心の底からのものなのか?


     報われなかった存在のれの果て
     受けれ難き死
     勲功をまとうその身に影はない
     何故、それを見てはくれないのか


     ずっと縛られていた
     ずっと縛られ続けている
     望む望まざるに関わらず・・・・・・
     そしてこれからもずっと


     進んで魔道に堕ちたのだろうか
     それとも 選択肢すらも与えられなかったのだろうか
     未だ何と舷々相摩げんげんそうましているのだろうか
     生前と何がで無いのだろうか・・・・・・?


     自由だったら
     名も無き者だったら・・・・
     何故ゆるされなかったのだろうか?
     疑問に応える声は ――ない


     かしられたこんられたはく?
     かしられたはくられたこん?
     いずれか全てか
     どちらにせよ名からは救ってなどくれはしないのだ  



--------------------------------------------------------------------------------  怨霊となった父親(正成)の噂を聞き、思うところがない息子(正行)の心境。